木花咲耶姫の微笑み

 

大観山展望所/神奈川県箱根町





2020年の個人成績(売上げ)は惨憺たるものだった。

3月に始まったコロナ騒動から自分の担当商圏では県の指導やら感染拡大やらで、度々規制がかかり売上げが見込めなくなることは2度3度どころではなかった。
勤め先の我が社は外資系の販売会社特有の性(サガ)で不振原因の犯人を特定する。
先年の2019年に引き続き2020年も小生が不振原因だと認定された。
ただ今回は付き合いの深い担当商圏をはずされるだけに留まらず、
長年慣れ親しんだチームから叩き出される事になった。
言うまでもないが、2020年はコロナ騒動が、2019年は新任マネジャーと営業部長の戦略ミスだと自分は思っている。


自分の担当商圏は神奈川県の東名高速道路沿いの横浜市から
静岡県富士市までの静岡県東部全域だ。

小田原からは箱根峠を越えて、三島や修善寺方面へ抜けて行く。
その逆も然りで箱根越えは高速道路を走るよりも楽しかった。
特にあのヘアピンカーブを全速で駆け上るスピード感は何度となく心を高揚させた。

2017年に北海道から転属してきたが、北海道に転属する2014年まで大体同じエリアを担当していたので箱根越えには慣れ親しんできたし、色々と随分と思い入れもあり感慨深い。


後任への引継ぎも終わり、また一人で峠を越えた。
ちょっと遠回りして大観山の展望所へ富士山を見に、
いやこれは何日も前から異動前に見納める日として計画していた。
年齢的には、仕事でここを通る事はもう無いだろうとの思いもあったので、
仕事には持参することのない愛用のカメラを同乗させた。


この場に立って数十分もしないうちに、
芦ノ湖を囲む箱根の山々は日暮れを迎えて暗くなってきたが、
その向こうの富士山は夕陽のスポットライトを浴びて風景の中に浮かび上がる。

そのとき富士の神、
木花咲耶姫命の微笑みを見た思いがした。




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